道成寺 (どうじょうじ)
能の『道成寺』を知らなくても、踊りの『娘道成寺』を耳にした事が無くても、安珍・清姫の伝説を全く知らない人というのは、あまりいないでしょう。 それほど有名な伝説ですが、実際に話の内容を知る人は意外に少ないのも真実です。何を隠そうこの私も、ずいぶん長い間安珍 ・清姫の話の舞台は京都の清水寺だと思いこんでいました。 これは、清姫→清水という名前の類似と日高川に飛び込む→清水の舞台という連想から一方的に信じこんでしまったのでしょうが… それはさておき、道成寺にまつわるこの伝説、実は二つあるのです。まず『道成寺縁起』に書かれる安珍 ・清姫伝説。
延長6年秋(醍醐天皇)、奥州から熊野参詣に来た美男の山伏 ・安珍は、途中紀伊の国牟婁郡真砂の庄司 ・清次の家に宿を借ります。その家の娘 ・清姫は、 「かの僧に志を尽し、あやしきまで覚え